湘南アマデウス合唱団

曲目解説

W.A.モーツァルト 戴冠式ミサ C-dur KV317
モーツァルトのミサの中でも「レクイエム」と並んで有名なミサで、原本は第二次世界大戦中ベルリンの国立博物館から何者かにに盗まれ行方知らずになったが、その草稿には1779年3月23日ザルツブルグで完成されたことが明記されている。
モーツァルトの作品は自分自身の都合や人に贈呈する場合を除いては、ほとんどスポンサーが存在する。ザルツブルグに在住していた時期はいわば大聖堂付の音楽専門の公務員という立場で、教会の依頼で作曲している。
この「戴冠式ミサ」(KV317)は作曲動機に諸説あり、作曲時期は2回目のパリ旅行から帰国した年の2ヶ月後で、その後続いて「荘厳ミサ」(KV337)が作曲されていて、この2曲とも“大ミサ”と呼ばれ、合唱もオーケストラの楽器編成も大規模、ザルツブルグ大聖堂で演奏される規模を大きく上回っている。それ故ザルツブルクの教会からの依頼ではなく、丁度その時期に行われる予定のレオポルドⅡ世の戴冠式に乗じて、モーツァルトが自分自身の就職活動の為に作曲したという説が今では最有力説となっている。
名前が後日「戴冠式ミサ」と呼ばれるようになったのはその為である。然しこの時は曲も就職のどちらも採用されなかった。
それまで“大ミサ”と呼ばれるのはいずれも50分を上回る大曲であって、この「戴冠式ミサ」(KV317)は演奏時間が約30分程度で小ミサ(ミサ・ブレヴィス)の小規模の長さとなっている。理由として当時のザルツブルグの大司教ヒエローニュムスが長いミサを嫌って30分以内にすることをモーツァルトに命じたことによる。モーツアルトは30分のミサ曲では音楽性上問題があると反対したが、いわゆる「泣く子と地頭」には勝てずしぶしぶ削って30分以内に収めている。ただし楽器編成の中にヴィオラがないことから、やはりザルツブルグ大聖堂のオーケストラを念頭に作曲されたのであろう。
歌詩は通常歌われるミサ曲で全て共通の詩からなっている。

① Kyrie キリエ 憐れみの讃歌
② Gloria グローリア 栄光の讃歌
③ Credo クレド 信仰宣言
④ Sanctus サンクトゥス 聖なるかな
⑤ Benedictus ベネディクトゥス ほむべきかな
⑥ Agnus Dei アニュス・デイ 神の子羊

の6章で構成されている。
最後のアニュス・デイはソプラノ独唱で始まり、その主題の4小節までオペラ「フィガロの結婚」の中で歌われる伯爵夫人のアリア「あの喜びの日はいずこ」の主題が使われているので聖俗混同と問題にされたが、伯爵夫人が祈るような気持ちから出た旋律で美しくモーツアルトが流用したのも自然な形かも知れない。

小笠原 康二

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